債務者の財産状態について

債権回収において、債務者が任意に弁済をする場合は、債務者の財産状態を必ずしも把握する必要はありません。
しかしながら、法的手段をもって強制的に債権回収をする場合には、債権者はあらかじめ債務者の財産状態を把握している必要があります。強制執行手続により債権回収をする場合は、原則として、債権者の方で債務者の財産を特定する必要があるからです。
そのため、今回は、債権者が任意に取得できる債務者の財産情報について、その概要を説明します。

1 公開されている情報

(1) 不動産登記

不動産は、取引の安全を図るため、不動産登記によりその権利関係が公示されており、誰でも、不動産登記記録に記録された情報を取得することができます。
債務者の住所地や事業所の所在地を知っていれば、対象となる土地・建物の登記情報を確認することで、その権利関係(所有者・担保など)が分かります。

(2) 不動産登記以外の登録等

債務者が特許権、商標権などを使用しているのであれば、不動産と同様に、特許原簿や商標原簿などに記載された情報を取得することができます。

債務者が自動車を使用しているのであれば、自動車登録ファイルに記載された情報を取得することができる場合もあります。

2 債務者や関係者からの情報

債務者や関係者からのヒアリングは、債務者の財産状態を把握する基本的な方法の1つです。例えば、債務者の勤務先(個人の場合)や、取引先(法人・個人事業主の場合)などの情報を取得することが考えられます。
債務者の勤務先が分かれば、債務者は当該勤務先に対して給与または報酬債権を有していることが考えられます。
債務者の取引先が分かれば、当該取引先に対する売買代金、売掛金、請負代金等を有していることが考えられます。

3 その他

債務者が上場会社であれば、有価証券報告書などの開示書類から財産状態を確認することも考えられます。また、会社債権者であれば、債務者である会社の計算書類(貸借対照表、損益計算書など)の閲覧・謄本の交付等を請求することができます。

その他、弁護士が受任している事件について、弁護士会照会という制度を利用して、一般の方では任意に入手できない債務者の財産情報を入手できる場合があります。

債務者の財産状態の把握を含め、債権回収をご検討されている場合は、当事務所にお気軽にご相談ください。

この記事は弁護士が監修しております。

東京中央総合法律事務所 弁護士 河本憲寿(東京弁護士会所属)
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