寄与分の立証方法について

はじめに

相続が起こった場合には、遺言がなければ基本的には法定相続分に従って遺産分割します。

しかし、相続人の中に特に相続財産の維持や増加に貢献した人がいる場合には、寄与分といって多めに遺産をもらうことができる権利が認められます。

ただし、寄与分が認められるためには、本当に寄与があったことを証明する必要があります。

今回は、寄与分の立証に必要な証拠集めの方法を解説します。

1. 基本は記録を残しておくこと

寄与分の立証をしたい場合には、証拠を残しておくことが大切です。よって、自分が被相続人(亡くなった人)の財産増加に寄与した場合には、それに関する記録をとっておくことが大切です。たとえばメモを書いておいたり、関係書類は捨てずに取っておくこと、他者に渡す書類の場合にはコピーや控えを取っておく等です。

寄与分には3つの類型がありますので、以下では類型別に分けて考えられる証拠類を検討しましょう。

2. 労務提供型

寄与分の類型として労務提供型があります。相続人が、被相続人の事業を手伝うなどして、相続財産の維持や増加に貢献した場合です。

労務提供型の場合は、自分がどのような形で被相続人の事業を手伝っていたのかを立証する必要があります。たとえば手伝いをしていた際に被相続人から何か書類をもらっていたり、自分が担当者となって取引先とやりとりしていた場合にはその書類をとっておくなどが考えられるでしょう。

自分が事業に継続的に寄与していた事を立証するために、自分が働いていた年の被相続人の確定申告書や税務書類などをとっておくことも大切です。

3. 財産出資・管理型

寄与分の類型として財産出資、管理型があります。相続人が被相続人に財産を出資したり借金の返済を肩代わりしてあげた場合や、被相続人の財産を管理していた場合などです。

財産出資・管理型の場合、自分が財産出資した証拠が必要です。具体的には、たとえば自分の銀行口座を解約したり株を売却して財産出資した場合、その口座解約に関する書類や株式売却書類を、振り込み送金で出資したならその振込証をとっておいたり銀行取引履歴をとっておくことなどが必要です。

自分が財産管理していたのであれば、管理していた際の財産の推移を示す記録などを用意することも考えられます。

3. 療養看護型、扶養型

寄与分の類型には療養看護、扶養型もあります。これは、被相続人が要介護状態の場合に、相続人が献身的に被相続人を介護したことにより介護費用の支払いを免れた場合などです。

この場合、被相続人がどのような状態であったかが重要ですので、被相続人の要介護度を示す書類が必要になります。たとえば病院のカルテや医師の診断書、介護認定書や介護ヘルパーの利用明細書、ヘルパーとの連絡ノートなどが資料になります。

また、自分が被相続人の介護をしていた期間や一日の介護に充てていた時間、介護の内容が分かる介護日記なども大切です。

その他、自分が仕事をしている場合に介護のために休んだ場合などは、仕事を休んだ日付や欠勤による減収分を記録しておくと良いでしょう。

まとめ

寄与分を認めてもらうには寄与分を立証する必要がありますが、寄与分の立証のためには証拠集めが重要です。労務提供型の場合には被相続人の事業に関する報告書や自分がかかわっていた証拠類、財産出資型では銀行取引履歴や振込証などの書類、療養看護型では要介護度を示す病院や介護関係書類などが重要な証拠(立証方法)になります。

この記事は弁護士が監修しております。

東京中央総合法律事務所 弁護士 河本憲寿(東京弁護士会所属)
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