デジタル時代の問題社員:テレワーク環境下での新たな課題と法的対応

1 新たな課題

近年、テレワークの急速な普及に伴い、企業は新たな労務管理の課題に直面しています。特に、いわゆる「問題社員」への対応は、テレワーク環境下で一層複雑化しています。本コラムでは、テレワーク特有の問題行動とその法的対応について、実務的な観点から解説いたします。

(1)勤怠管理の不正

テレワーク環境下での問題行動として、最も頻繁に相談を受けるのが勤怠管理の不正です。例えば、オンライン状態を維持したまま実際には仕事をしていないケースや、勤務時間中の私的行為の増加などが挙げられます。こうした行為は、労働契約上の義務違反となる可能性が高く、適切な対応が求められます。

(2)情報セキュリティの問題

また、情報セキュリティに関する問題も深刻です。在宅勤務中の機密情報の取り扱いや、個人所有デバイスでの業務データの扱いなど、情報漏洩のリスクが高まっています。これらは、不正競争防止法や個人情報保護法に抵触する恐れがあり、企業にとって大きな法的リスクとなります。

(3)オンラインハラスメント

さらに、オンラインハラスメントという新たな形態のハラスメントも注目されています。ビデオ会議でのいじめや、社内SNSでの中傷など、従来のハラスメントとは異なる形で発生しており、労働施策総合推進法に基づく対応が必要です。

2 法的対応

(1)就業規則の見直し

これらの問題に対処するためには、まず就業規則の見直しが不可欠です。テレワーク特有の問題行動を明確に規定し、懲戒事由として明記することで、法的根拠を持った対応が可能となります。当事務所では、多くの企業様の就業規則改定をサポートしており、テレワーク時代に即した規定の策定をお手伝いしています。

(2)労働時間管理

労働時間管理も重要な課題です。労働基準法の遵守を念頭に、適切な労働時間管理システムの導入が求められます。テレワーク中の労働時間の適正な把握と管理は、残業代請求や過労死などの労働問題を予防する上で極めて重要です。

(3)具体的な対応

問題社員への具体的な対応としては、事実関係の明確な把握と記録、当事者との面談(オンライン面談の場合の注意点も含む)、改善計画の作成と実行、そして必要に応じた懲戒処分の検討という手順が一般的です。ただし、各ステップにおいて法的リスクが潜んでいるため、専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めることをお勧めします。

予防的アプローチとしては、テレワークポリシーの策定と周知、定期的なオンラインコミュニケーションの促進、メンタルヘルスケアの強化、デジタルリテラシー研修の実施などが有効です。当事務所では、これらの施策の導入に関する法的アドバイスも行っております。

テレワーク環境下での問題社員対応は、従来の対応に加えて、デジタル技術や新たな労働環境を考慮した取り組みが必要です。適切な規則の整備と、従業員とのコミュニケーションを重視することで、多くの問題を未然に防ぐことができます。

当事務所は、デジタル時代の労働問題に関する豊富な経験と専門知識を有しています。テレワーク環境下での問題社員対応でお悩みの企業様は、お気軽にご相談ください。私たちが、御社の状況に応じた最適な法的助言と解決策を提供いたします。

この記事は弁護士が監修しております。

東京中央総合法律事務所 弁護士 河本憲寿(東京弁護士会所属)
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