遺産の相続と時効:相続人が知っておくべきこと

はじめに

遺産相続は、被相続人の死亡により開始され、相続権自体が時効により消滅することはありません。

しかし、相続人が相続の開始を知らなかったり、相続手続きを怠ったりすると、以下の時効の問題が発生する可能性があります。

本コラムでは、遺産相続における時効について、相続人が知っておくべきポイントを解説します。

相続における期間の重要性

次のとおり、遺留分侵害額請求、相続回復請求権について、民法で時効が定められています。

  • 相続開始及び遺留分の侵害を知った時から1年、または相続開始の時から10年で遺留分侵害額請求権が時効によって消滅します(民法1048条)。
  • 相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年、または相続開始の時から20年で相続回復請求権の時効が成立します(民法884条)。

遺留分侵害額請求権とは

遺留分とは、遺言が存在したとしても相続人が最低限受け取れる財産の割合を指します。遺留分の侵害があった場合、侵害された相続人は遺留分侵害額請求権を行使でき、一定額を受け取ることができます(民法1046条)。

しかし、先ほど説明したように、遺留分が侵害されていたとしても、相続開始を知った時から1年または相続開始から10年が経過すると、遺留分侵害額請求権は行使できなくなってしまいます(民法1048条)。

例えば、Aさんが亡くなり、その遺産として不動産がありました。相続人はAさんの子供のBさんとCさんです。しかし、遺言により全ての不動産がCさんに渡ることが定められていました。Bさんは遺言の存在を知らず、相続開始から3年後に遺留分の侵害を知りました。この場合、Bさんはこの遺言を知ってから1年か経過するまでは遺留分侵害額請求権を行使することができますが、1年経過後は時効によりその権利を失います。

相続回復請求権とは

相続回復請求権とは、相続権を有する相続人が、相続人であると称して真の相続人の権利を侵害している者に対して、正当な相続権を主張して相続財産の占有・支配の回復を請求する権利をいいます。相続回復請求権が時効によって消滅してしまうと、権利を侵害している者に対して正当な権利を主張できなくなってしまいます。

まとめ

相続においては、相続財産請求権や遺留分侵害額請求権といった時効によって消滅してしまう権利があり、それぞれに異なる時効期間が設けられています。相続人は、これらの時効を正確に理解し、適切な時期に権利行使を行うことが重要です。相続問題に直面した際は、速やかに専門家に相談し、適切な対応を取ることをお勧めします。

この記事は弁護士が監修しております。

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