裁判例集

弁護士費用相当額が損害として認められた裁判例

追突事故の被害者が、車両の修理費用に加えて弁護士費用相当額も請求した事案において、被害者が自動車保険契約の弁護士費用特約を利用していたとしても、弁護士費用相当額の保険金は、被害者の負担した保険料の対価として支払われるものであるから、弁護士費用相当額の損害が発生していないとはいえないとした裁判例があります(東京地判H24.1.27)。

後遺障害別等級表の認定基準には達しないが慰謝料として認められた裁判例

交通事故により、下顎骨骨体骨折の傷害を負い、顔面に瘢痕が残ったものの、後遺障害等級の認定がなされなかった19歳の未婚女性について、認定基準に達していないということのみをもって慰謝料請求の対象となる後遺障害は残存していないとすることはできないとして、慰謝料請求の対象となる後遺障害といえるか否かは、瘢痕の部位、大きさ、色彩や、被害者の性別、年齢、職業等の諸般の事情を総合して決すべきとし、当該女性については、慰謝料によって慰謝するのが相当に至っているとされた裁判例があります(東京地判H7.1.27)。

症状固定後の治療費が損害として認められた裁判例

交通事故により、頸部捻挫の症状が残ったケースにおいて、被害者が支払った治療費には症状固定後に生じた分が含まれてはいるが、改善は期待できないまでも、保存的治療としては必要であったと推定されるとして、事故との因果関係が認められた裁判例があります(神戸地判H10.10.8)。

慰謝料の増額を認めた裁判例

会社の事実上の主宰者として、成功を目指して事業開始の準備を進めていたところ、事故によって長期間の通院治療を余儀なくされ、事業が頓挫して会社が休眠状態となった事案について、被害者の無念の思いが強いとして、精神的苦痛に対する慰謝料としては300万円をもって相当とし、、強いて内訳を示せば、120万円が通院慰謝料、その余はそれ以外の事情を斟酌した結果であるとされた裁判例があります(横浜地判H5.8.26)。

近親者の入院付添費を認めた裁判例

近親者が被害者の入院に付き添った場合の損害については、被害者が近親者の付添看護料の支払いをせずまたはその支払請求を受けていなくても、被害者は近親者の付添看護料相当額の損害を蒙ったものとして、加害者に対しその賠償を請求できるものとされています(最判S46.6.29)。現在の実務では、近親者の入院付添費はある程度定額化されており、それを基準として判断されております。

内縁配偶者の固有の慰謝料を認めた裁判例

自転車と自動車の衝突事故により、自転車を運転していた被害者が亡くなった事故において、婚姻届出をしていなくとも、事実上婚姻と同様の関係にあった内縁の配偶者には、固有の慰謝料請求権があると認めた裁判例があります(東京地判H27.5.19)。

同乗者について減額を認めなかった裁判例

加害者が普通乗用自動車を運転中に、街灯柱に自動車を衝突させ、助手席に同乗していた被害者が重傷を負った事故について、無償で同乗していたことを理由に減額すべきとの加害者の主張に対し、減額を認めなかった裁判例があります(東京地判H16.3.22)。

外国人留学生の休業損害が認められた裁判例

交通事故により怪我を負った外国人留学生の休業損害について、大学卒業予定時から10年間については日本での就労を前提とし、その後は本国での就労を前提とした基礎収入を算定して、それらが休業損害として認められた裁判例があります(神戸地判H18.11.24)。

車両損傷について修理未了であっても損害として認められた裁判例

物損事故において、事故車両の修理がされておらず、また、今後も修理する可能性がないとしても、現実に損傷は生じているとして、修理費用相当額が損害として認められた裁判例があります(東京地判H10.2.24)。

シートベルト不装着のケースについて、過失相殺されなかった裁判例

シートベルトを装着せずに後部座席に乗車していた被害者が、交通事故により傷害を負ったケースについて、被害者がシートベルトを装着していなかったことによる被害結果の拡大可能性は認めつつも、加害者の運転の態様から、過失相殺を認めなかった裁判例があります(大阪地判H17.7.25)。

休業損害について、前職の収入を基準とすることを認めた裁判例

転職して研修期間中に事故に遭い、傷害を負ったケースについて、研修期間中の収入は、一時的に低額になっていたにすぎず、事故に遭わなければ、前職と同様の収入を得られていたとして、前職の給与を休業損害の算定基準として採用された裁判例があります(東京地判H17.11.11)

この記事は弁護士が監修しております。

東京中央総合法律事務所 弁護士 河本憲寿(東京弁護士会所属)
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