会社役員の休業損害について2
前回の記事では,会社役員にも休業損害が発生しうるかにつき,役員報酬には労務提供の対価の側面があり,交通事故による受傷や治療のために労務提供に支障をきたした場合等には,会社役員にも休業損害が発生しうることを説明しました。
今回の記事では,役員報酬の労務対価性をどのようにして判断するのかについて説明します。
裁判実務においては,会社の規模や利益状況,交通事故の被害に遭った役員の年齢,役職,職務内容,役員報酬額,他の役員の職務内容と報酬額,他の従業員の職務内容と給与額,事故前後での役員報酬額の増減の有無及び増減額等をもとに,当該役員の役員報酬の労務対価部分について判断されています。
たとえば,従業員数の少ない会社であり,当該役員が営業活動を行うなどして仕事の受注を受けていたものの,事故後に当該役員が営業活動をできなくなり,会社の売上げが減少したなどの事情や,当該役員が高度の専門性や特殊な知識,経験,技能を有しており,他の従業員では当該役員の代わりを務めることができないという事情は,労務対価性を肯定する方向に働きます。
次回は,会社役員の休業損害についての裁判例を紹介いたします。