無保険車傷害保険について

はじめに

自動車免許を取得して自動車を運転する場合、損害賠償責任保険に加入することは必須ですが、この損害賠償責任保険には意外といろいろな種類のものがあります。

特に自賠責保険に付加して加入する任意保険については、かなり多様な保険内容があり正確に知らないことも多いものです。

そこで今回は、任意保険の一つである無保険車傷害保険について解説します。

1.無保険車傷害保険が対象とする事故

無保険車傷害保険とは、どのような場合に補償を受けられる保険なのでしょうか。

これは、「無保険車」という名のとおり、交通事故の相手方が任意保険の対人賠償責任保険に加入していない場合に適用される保険です。

通常、自動車を運転する場合は自賠責保険に加えて任意保険に加入していることが多いです。

しかし、中には任意保険に加入していない人もいます。実際、日本損害保険協会の調査結果によると、2000年ころのデータにおいて任意保険への加入率は7割程度にとどまっているという結果があります。

ここから中古車や展示車などの車両数を引いても、公道を走っている車の約15%程度は任意保険に加入していないと言われています。

このような無保険車との間の交通事故に遭った場合は、自賠責保険の上限を限度とする金額でしか補償が受けられないこととなってしまいます。

自賠責基準の場合、たとえば死亡の場合に3000万円、後遺障害の場合に7504000万円までの補償しか受けられません。

このような賠償額では、実際の補償としては少なすぎます。

無保険車との間の交通事故に遭ってしまった場合にも、無保険車傷害保険に加入していれば、無保険車傷害保険から保険金の支払いを受けることが出来るのです。

2.無保険車傷害保険が適用されるケース

次に、具体的に無保険車傷害保険がどのような場合に適用されるのかを見てみましょう。

無保険車傷害保険は、以下の4つの条件のいずれかに該当する場合に適用され、補償を受けることが出来ます。

(1)事故の相手方が、任意保険の対人賠償責任保険に加入していない。

(2)事故の相手方が対人賠償責任保険に加入しているけれども、運転者の年齢などの条件規定に沿っておらず、その保険金が支払われない。

(3)交通事故がひき逃げ・当て逃げ事案などであるため、事故の加害者(相手方)が特定できない。

(4)事故の相手方が対人賠償責任保険に加入しているけれども、その補償する保険額が被害者に支払う賠償額に足りない。

上記のようなケースにおいて、無保険車傷害保険が適用されます。

3.   無保険車傷害保険が補償する範囲

では、無保険車傷害保険では、どの程度の範囲までの補償が受けられるのでしょうか。

無保険車傷害保険の補償額は、自分が加入している対人賠償責任保険の基準と同じです。

ただし、対人賠償責任保険の限度額を無制限に設定している場合は、無保険車傷害保険の限度額は2億円となります。

また、無保険車傷害保険が補償するのは後遺障害や死亡の場合だけであり、傷害に対する補償はありません。

同じように、休業損害や車の修理代などの物損についても補償はありません。

これらの損害については、別途搭乗者傷害保険や人身傷害保険などに加入しておく必要があります。

まとめ

無保険車傷害保険は、交通事故の相手方が任意保険の対人賠償責任保険に加入していない場合の保険です。

後遺障害や死亡による損害には適用されますが、傷害による損害については補償されないので注意が必要です。

 

この記事は弁護士が監修しております。

東京中央総合法律事務所 弁護士 河本憲寿(東京弁護士会所属)
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