民法改正が債権回収に与える影響‐保証・連帯保証‐

平成29年に民法が改正され、遂に令和2年4月1日から施行されました。この改正によって、債権回収にも影響が生じましたので、今回は、その一つである「保証・連帯保証」に関する影響について説明したいと思います。

1 保証人・連帯保証人について

まずは、保証人・連帯保証人について簡単に説明をします。
保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときは、その履行をする責任を負います(保証債務)。
この点、債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、①まずは主債務者に請求するよう主張することができ(これを「催告の抗弁権」といいます)、また、②先に主債務者の財産に強制執行するよう主張することができます(これを「検索の抗弁権」といいます)。
この普通の保証人とは異なり、連帯保証人という制度があります。
連帯保証人は、上記で説明した「催告の抗弁権」も「検索の抗弁権」も有しない点で、通常の保証人と大きく異なります。
 そのため、債権者にとっては、普通の保証人より連帯保証人がいる方が、債権回収の観点からより望ましいものといえます。
この点は、民法改正によっても変更はありません。

2 債権回収の場面で注意すべき改正点

改正前民法では、連帯保証人に対して請求をした場合、その効力が主債務者にも及ぶとされていました。ところが、今回の民法改正によって、連帯保証人に対して請求をしても、原則として、その効力は主債務者に及ばなくなりました。
そのため、これまでは、連帯保証人に対して、催告や裁判上の請求をすることで主債務者についても消滅時効の完成を阻止することができましたが、今回の改正では、原則として、これができなくなりましたので、時効管理において注意が必要です。
なお、逆に、主債務者に対する請求の効力は、改正前同様に、連帯保証人にも及びます(改正による変更なし)。

このように、民法改正により、主債務者・連帯保証人に対する債権回収の場面でも少なからず影響が出ておりますので、ご不安な方は、弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

この記事は弁護士が監修しております。

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