支払督促について

支払督促とは、金銭や有価証券の給付請求につき、債権者の申立てのみにより、その支払いを命じる裁判所書記官の処分をいいます。
支払督促は、債務者の言い分を聞かず発せられるため、債務者がその債務の存在を争わない場合には、通常の訴訟手続と比べて、時間的にも費用的にも非常に簡便な手続といえます。
一方で、債務者が債務の存在を争うことが予想される場合には、留意すべき点も存在します。
以下では、支払督促の手続と、この手続を選択する際の留意点の概要を説明します。

1 支払督促の手続について

(1) 支払督促の要件

支払督促を行うには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 金銭その他の代替物または有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求であること
  2. 将来の給付請求ではないこと
  3. 日本において、かつ公示送達によらないで相手方(債務者)に送達できること

(2) 申立方法

支払督促の申立ては、書面でも口頭でもよいとされていますが、通常は、支払いを求める範囲(請求の趣旨)およびその理由(請求の原因)を記載した書面を裁判所書記官に提出して申し立てます。

なお、貸金、立替金、求償金、売買代金、通信料、リース料の6類型に関しては、事前登録等の手続を経て、支払督促オンラインシステムを利用して申し立てることができます。

(3) 管轄(申立てができる裁判所)

支払督促の管轄は、債務者の住所、居所、営業所もしくは事務所または就業場所(以下「住所等」といいます。)の所在地を管轄する簡易裁判所になります。

なお、さきほどご説明した支払督促オンラインシステムでの申立ては、すべて東京簡易裁判所が管轄となります。
もっとも、債務者の異議申立て(後述します)により訴訟に移行する場合は、債務者の住所地等を管轄する簡易裁判所または地方裁判所が管轄裁判所になります。

(4) 審理および仮執行宣言の申立て

申立ての内容および形式に不備がなければ、裁判所書記官は、債務者の言い分を聞かず、請求の内容の当否を判断せずに、支払督促を発します。
支払督促は、その正本が債務者に送達されて、はじめて効力が生じます。

支払督促が債務者に送達されてから2週間以内に、債務者から督促異議の申立てがない場合は、債権者は、仮執行宣言の申立てをすることができ、その申立てにより仮執行の宣言がなされれば、これが債務名義になります。

(5) 督促異議の申立て

債務者は、支払督促を受け取った後、督促異議の申立てをすることができます。この異議申立てには、債務者は異議の理由を記載する必要はありません。

このように異議申立てがあった場合、その異議が仮執行宣言の前であると後であるとを問わず、支払督促の申立時に、申立をした簡易裁判所(請求金額によっては地方裁判所)に訴えの提起があったものとみなされます。
すなわち、異議申立てがあった場合は、改めて通常の訴訟手続において請求を求めていくということになります。

2 支払督促に関する留意点

債務者が債務の存在を争うことが予想される場合には、債務者は異議申立てをしてくる可能性が高いと言えます。このように場合には、支払督促の方法を選択するにあたり、以下の点に留意する必要があります。

(1) 専属管轄の問題点

もし通常の訴訟を選択していた場合、債権者にとって有利・便利な管轄裁判所(例えば債権者の住所地近くの裁判所)で訴訟ができる可能性がありますが、異議申立後の訴訟は債務者の住所等を管轄する裁判所で訴訟をしなければならなくなります。
遠方での訴訟対応のコストが生じるようなケースでは、最初から通常訴訟を提起した方が合理的であると言えます。

(2) 支払督促手続が無駄になることによる時間的コスト

異議申立により訴訟移行となった場合、債権者は訴状に代わる準備書面を裁判所に提出する必要があり、この提出から1か月程度先になって、ようやく第1回目の裁判期日となります。
他方、最初から通常訴訟を提起した場合は、訴えの提起後、特に問題なければ提起後1か月程度先に第1回目の裁判期日が開かれます。
このように、債務者が異議申立をすることが想定される場合は、最初から通常訴訟を提起した方が、時間的に早期に事件解決することが見込まれます。

支払督促による債権回収をご検討されている場合は、当事務所にお気軽にご相談ください。