相続時の不動産問題~親の土地をどうするべきか?法律相談のポイント~

相続において、不動産は特にトラブルが発生しやすい資産の一つです。親の土地を相続する際、どのような選択肢があるのか、また法律的な観点からどのように対処すべきかについて、解説いたします。

1. まずは不動産の状況を確認する

親名義の土地を相続する際、最初に確認すべきは 登記情報と権利関係 です。
具体的には、以下の点をチェックしましょう。

  • 登記簿謄本の取得(法務局で「登記事項証明書」を入手し、所有者や抵当権の有無を確認)
  • 固定資産税の状況(自治体からの納税通知書を確認)
  • 土地の用途・評価額の確認(売却や賃貸を考える際に重要)
  • 共有名義の有無(相続人が複数いる場合、単独所有が可能か確認)

これらの情報をもとに、土地をどのように扱うかを検討する必要があります。

2. 土地をどうするかの選択肢

土地を相続した場合、主に以下の選択肢があります。

  1. 自分で居住する
    • 親の自宅を引き継いで住む場合、住宅ローンの残債や維持管理の負担を考慮する必要がある。
  2. 売却する
    • 相続人間での共有状態を解消する手段として有効。
    • 売却には相続人全員の合意が必要なため(民法251条1項)、事前の話し合いが不可欠。
  3. 第三者に貸す
    • 賃貸する場合は、借主との契約や管理の手間が発生。費用はかかるが不動産管理会社に賃貸管理を依頼することもあり得る。
    • 定期借地契約などを活用し、安定した収益を得る方法もある。
    • ただし、借地権が発生すると、後の売却が難しくなる点に注意。
  4. 相続人の間で分割
    • 例えば、一人が土地を取得し、他の相続人に代償金を支払う(代償分割)。

それぞれの方法にはメリット・デメリットがあるため、相続人全員の意向を確認し、適切な選択を行う必要があります。

 

3. 相続登記の義務化(2024年4月施行)に注意

2024年4月から、相続登記が義務化されました(不動産登記法76条の2)。相続を知った日から3年以内に登記をしないと、10万円以下の過料が科される可能性があります(不動産登記法164条)。

登記をしないまま放置すると、以下のリスクが生じます。

  • 土地の所有者が不明となり、売却や活用が難しくなる。
  • 相続人が増えて権利関係が複雑になり、手続きが困難になる。
  • いざ売却する際に相続人全員の同意が必要となり(民法251条1項)、調整が難航する。

こうした問題を避けるためにも、相続が発生したら早めに登記を行うことが重要です。

4. 相続人間のトラブルを防ぐために

不動産の相続は、特にトラブルが起きやすい分野です。以下のような点に注意しましょう。

遺言書の有無を確認
遺言があれば、基本的にその内容に従います。公正証書遺言がある場合は信頼性が高く、スムーズに手続きを進められます。

相続人間で早めに協議を開始
土地の扱いをめぐり、相続人の意見が対立するケースは少なくありません。早めに話し合いの場を持ち、互いの意向を確認することが大切です。

共有名義は慎重に
土地を相続人間で共有すると、将来的に売却や活用が難しくなる可能性があります。単独相続や換価分割を検討することをおすすめします。

弁護士に相談する
法的手続きや相続税の問題も絡むため、専門家のアドバイスを受けながら進めると安心です。

5. 不動産の相続には早めの対策を

不動産を相続する際は、登記や権利関係の確認を早めに行い、相続人間で協議を進めることが重要です。放置すると、税負担やトラブルの原因となるため、法律相談を活用しながら、適切な手続きを進めましょう。

当事務所では、不動産の相続や登記手続き、相続人間のトラブル回避のアドバイス を提供しております。相続に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

この記事は弁護士が監修しております。

東京中央総合法律事務所 弁護士 河本憲寿(東京弁護士会所属)
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