1 はじめに
不動産賃貸借契約は、貸主と借主の双方が権利と義務を負う契約です。しかし、契約の解釈や履行に関してトラブルが発生することも少なくありません。本コラムでは、不動産賃貸借契約に関する法律トラブルについて、貸主と借主の双方が知っておくべきポイントを解説します。
2 契約前に確認すべきポイント
(1)契約書の重要性
普通賃貸借契約は口頭でも成立しますが、トラブルを防ぐためには書面で契約を交わすことが重要です。特に、賃料・敷金・保証金・原状回復義務・契約期間・更新条件などは明確にしておくべきです。これに対し定期賃貸借契約は書面での契約が必須となり、更新や解除に関し普通賃貸借と大きな違いがありますので注意が必要です。
(2)重要事項説明
宅地建物取引業法に基づき、不動産業者は契約前に重要事項説明を行う義務があります。物件の用途制限や修繕義務の所在など、細かな点も確認しましょう。
3 契約期間中のトラブルと対処法
(1)賃料未払い
賃料の未払いが発生した場合、貸主は内容証明郵便で催告し、それでも支払われない場合は契約解除や法的手続を検討することになります。借主は支払困難な場合、早めに貸主と交渉することが重要です。
(2)修繕義務のトラブル
貸主には賃貸物件を適切な状態に維持する義務があります。しかし、借主が故意または過失で損傷を与えた場合、その修繕費用は借主負担となります。修繕義務の範囲について契約時に確認しておくことが大切です。
(3)近隣トラブル
騒音や違法駐車など、近隣住民とのトラブルは契約解除の原因になることもあります。貸主は注意喚起を行い、必要に応じて契約の解除手続きを進めることができます。
4 契約終了時のトラブル
(1)原状回復義務
借主は退去時に原状回復義務を負いますが、経年劣化や通常使用による損耗については借主の負担とはなりません。トラブルを防ぐため、国土交通省の「原状回復ガイドライン」を参考にしましょう。
(2)敷金・保証金の返還
敷金の返還を巡るトラブルは頻発します。契約時に敷金の精算方法を明確にしておくことが重要です。貸主は合理的な根拠を示して精算を行う必要があります。
5 まとめ
賃貸借契約は貸主・借主双方の信頼関係に基づくものですが、契約の解釈を巡るトラブルは少なくありません。契約書の内容を十分に理解し、トラブルが発生した場合は冷静に対処することが大切です。解決が困難な場合は弁護士に相談することをおすすめします。