寄与分が認められる例

はじめに

相続が起こった場合、有効な遺言があればそれに従いますが、遺言がなければ基本的には法定相続分に従って遺産を分割して相続することになります。

しかし、遺産分割の際に法定相続分だけに従うと、かえって不公平になることがあります。

このような不都合を是正するために、法は「寄与分」という制度を設けています。

では、この寄与分は、具体的にどのようなケースにおいて認められるものなのでしょうか。

今回は、寄与分が認められる例をご紹介します。

1.寄与分が認められる例

寄与分は、法定相続人の中に被相続人の財産の維持増加に特に貢献(通常期待される程度を超える貢献)した人がいる場合、その相続人の相続分を増加させることで共同相続人間の公平を図る制度です。

この寄与分が認められる例の典型的なものは以下のようなものです。

(1)労務提供型

相続人が、長年にわたって被相続人の行う事業(農業や漁業、小売業や飲食業、その他の個人事業や会社経営など)に従事し続け、相続財産の維持や増加に貢献した場合です。単に稼業を一時的に手伝っていただけの場合や相当の給料をもらっていた場合には寄与があったとは認められません。

(2)財産出資、管理型

相続人が被相続人の事業に出資したり借金の返済を肩代わりした場合、不動産等を贈与した場合などです。

また、被相続人の財産を管理し、管理費用の支出などを免れた場合などにも寄与分が認められます。

(3)療養看護、扶養型

付き添い看護を常に必要とするような要看護状態において、相続人が被相続人の療養看護を行って、本来であれば必要だったはずの看護費用等の支出を免れさせた場合などです。被相続人の生活費を負担して、被相続人を扶養していた場合も当てはまります。ただし、相続人と被相続人の身分関係から当然行うべきと考えられるような、単なる病人に対する看護だけでは「特別の寄与」とは認められず、職業看護人に支払うべき報酬等の看護費用の出費を免れたという結果が認められる必要があります。

また、単に相続人がどのような看護を行ったかのみでなく、被相続人がその程度の療養看護を必要としていたかという点も重要です。一般に、裁判上では、寄与分が認められるためには、被相続人が要介護度2以上の状態にあることが必要とされているようです。

2.寄与分が認められた具体的な判例

次に、寄与分が認められた具体的な判例を見てみましょう。

(1)前橋家庭裁判所高崎支部 昭和61.7.14

相続人である妻とその配偶者(婿養子)が、長年にわたって被相続人の家業の養豚業に従事してきた家業従事型の事案において、寄与分が認められました。

(2)盛岡家庭裁判所 昭和61.4.11

相続人である子が、老人性痴呆で常時付き添い看護を要する状態であった被相続人の看護を10年間にわたって看護し続けた療養看護型のケースです。付添看護師などに支払うべき費用を免れたとして、この相続人に寄与分が認められました。

(3)大阪家庭裁判所 昭和61.1.30

相続人である子が被相続人である親に対し、18年間にわたって交際費を与えたり財産管理費を負担し続けた財産出資、管理型の事案です。

この事案では、相続財産の減少を防いでその維持に貢献したとして、この相続人に寄与分が認められました。

まとめ

以上のように、寄与分が認められる典型例には家事従事型や療養看護、扶養型、財産出資、管理型などがあります。

今まで寄与分が実際に認められた事例は、いずれも特別の寄与と呼べるくらいの寄与があったケースです。

相続人と被相続人の身分関係から当然期待されるような通常の看護などの行為では寄与分認められにくいことになります。

参考にしてみてください。

この記事は弁護士が監修しております。

東京中央総合法律事務所 弁護士 河本憲寿(東京弁護士会所属)
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