家事従事者の休業損害について 1

1 家事従事者とは

家事従事者とは、家族等のために現実に家事労働に従事している者をいいます。

家事従事者は、「家族等のために」家事労働に従事している方ですので、一人暮らしをしており、自身のためだけに家事労働を行っている方は、家事従事者には該当しません。

また、家事従事者というと、いわゆる専業主婦、すなわち女性をイメージされる方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、年齢、性別を問わず、家族等のために家事労働に従事している方であれば、家事従事者に該当します。

2 家事従事者に休業損害が認められるか

それでは、家事従事者が交通事故により負傷し、受傷や治療のために家事労働を行うことができなかった場合、給与所得者等と同様、休業損害の支払いを求めることができるのでしょうか。

一般に、家事従事者は、家事労働を行ったことの対価として、家族からお金を受け取ったりはしません。

そのため、交通事故による受傷や治療のため、家事従事者の家事労働に支障をきたしたとしても、金銭的な損害が生じることはなく、休業損害は請求できないようにも思えます。

しかしながら、仮に、家事労働を家族以外の第三者に依頼した場合、通常、その家族から第三者に対して一定程度の対価を支払うこととなるでしょう。
家事従事者が家事労働を行ったことに対する対価を受け取ってないのは、家事労働を提供する側と受け取る側との間に、家族関係等の特殊な関係が存在するからにすぎないといえます。

そのため、家事従事者が家事労働を行うことにより、その家族には、第三者に対して支払うべき家事労働の対価相当額を支払わずに済むという金銭的な利益が生じているといえます。
したがって、家事従事者についても、休業損害を請求できる場合があります。

この記事は弁護士が監修しております。

東京中央総合法律事務所 弁護士 河本憲寿(東京弁護士会所属)
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