給与所得者の休業損害について 2

サラリーマンや公務員などの給与所得者が交通事故に遭った場合には、実際の給料の金額などを基準にして相手方に対して休業損害を請求することができるケースが多いです。
ただ、給与所得者の場合、事故によってボーナスを減らされたり、昇進が遅れたり、退職を余儀なくされたりなどの損害が発生することもあります。
このような場合には、どのような補償を受けられるのでしょうか?
今回は、給与所得者が休業損害を請求する場合に問題となるいろいろなケースについて解説します。

1.ボーナスが減った場合

サラリーマンなどの給与所得者が交通事故で仕事に行けなくなると、具体的に減収はなくても問題が起こることが多いです。
よくあるのが、休業したこと自体や休業したことによる成績の低下が不利益に評価されて、ボーナスを減らされてしまうケースです。
このような場合には、ボーナスの減額分も休業損害として認められます。
ただし、ボーナスの減額分を請求するには、具体的にどの程度の減額があったのかを明らかにする必要があります。そのためには、勤務先に「賞与減額証明書」という書類を作成してもらい、事故によって具体的にいくら賞与が減額されたかを明らかにしてもらった上で、相手方任意保険会社に提出する必要があります

2.昇進が遅れた場合

交通事故で働けない期間が長くなってくると、勤務先での昇進が遅れることがありますし、予定されていた昇進がなくなってしまうこともあります。
このように、事故の影響で昇進できなくなる、昇給が遅れるなどの損害が生じた場合にも、その損失分を休業損害として相手方に支払いを請求することができます。
具体的には、昇級後の給与額を基準に休業損害を請求することができます。
昇進や昇給が遅れたことによる休業損害を請求する場合には、実際に事故によって昇進が遅れたことや昇級後の給与額などを証明する必要があります。
公務員などの場合には比較的計算がしやすいですが、民間企業の場合には、就業規定や勤務先に発行してもらう証明書によって、証明する必要があります

3.交通事故によって退職を余儀なくされた場合

給与所得者の場合、交通事故によって働けなくなった期間が長引いたり、職場復帰できる可能性が低くなってきたりすると、退職せざるを得なくなるケースがあります。このような場合には、交通事故がなければ退職する必要が無かったのであり、退職後に本来得られるはずであった給料を得ることができなくなるので損害が発生します。
この場合、請求できる休業損害の休業日数は、退職後症状固定までの日数となります。
たとえば、1日あたりの基礎収入が1万円のサラリーマンが、交通事故後に自主退職をして、その後100日経ってから症状固定した場合には、
1万円×100日=100万円
の休業損害を請求できることになります。
 

この記事は弁護士が監修しております。

東京中央総合法律事務所 弁護士 河本憲寿(東京弁護士会所属)
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