会社役員の休業損害について1

前回までの記事では,家事従事者の休業損害についてご説明しました。
今回からは,会社役員の休業損害についてご説明します。

一般に,会社役員の方は,役員報酬という形で会社から金銭の支払いを受けることとなります。
役員報酬には,会社に生じた利益を当該会社の役員に配当するという側面があり,当該役員が現実にどのような業務を行ったかに関わらず,会社から当該役員に対して支払われます。
そのため,会社役員の方が交通事故により受傷し,傷病や治療等のために業務に従事できない期間が生じたとしても,当該会社役員の収入は減少せず,休業損害が発生する余地はないようにも思えます。
しかしながら,役員報酬には,単に経営者として利益の配当を受けるという側面だけでなく,会社に対して労務を提供したことの対価としての側面もあります。
この2つの側面のうち,前者については,交通事故による受傷等とは全く無関係に支払われるものであるという理屈も立ちます。

他方,後者については,傷病や治療等が労務の提供に支障をきたすこともあり,休業による減収が生じうるので,休業損害を観念できます。

次回は,役員報酬の労務対価性をどのように判断するのかについてご説明します。

この記事は弁護士が監修しております。

東京中央総合法律事務所 弁護士 河本憲寿(東京弁護士会所属)
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