搭乗者傷害保険について

1 はじめに

交通事故における損害賠償責任保険には、強制加入の自賠責保険とそれに上乗せする形で任意に加入する任意保険があり、任意保険の中にもいろいろな種類の保険があります。自動車保険に加入するときには、この任意保険のうちで、どの保険に加入すれば良いのか判断に迷うことが多いです。

そこで今回は、任意保険の中でも、意外と内容や補償内容がきちんと理解されていないことの多い「搭乗者傷害保険」について解説します。

2 搭乗者傷害保険とは

そもそも、搭乗者傷害保険とはいったいどのような保険なのでしょうか。

搭乗者傷害保険とは、その保険に加入している車両に乗車していた人が事故によって怪我をしたり死亡した場合に、保険金の支払いを受けることのできる保険です。

自賠責保険や任意保険の対人賠償責任保険では、事故の相手方の人身損害にしか保険金が支払われないので、自分の側の損害を補填するためには、この搭乗者保険などに加入しておく必要があります。なお、搭乗者傷害保険と同様に、自分の側の人身損害を補償する保険としては人身傷害保険があり、この2つについては違いがわからないという声がよく聞かれますが、両者の違いについては、次項にて詳しく解説します。

3 人身傷害保険との違い

搭乗者傷害保険は、人身傷害保険と非常によく似ており、この2つの保険の違いがわからないという声がよく聞かれます。

確かに、どちらの保険も「加入している車両が事故に遭った際、その車両に乗っていた人に発生した損害を補償する保険」です。

搭乗者傷害保険では、運転者自身に生じた損害が補償対象に含まれない、などの誤解もときどき見受けられますが、補償対象については、この2種類の保険に違いはありません。運転者も同乗者も搭乗者傷害保険の補償対象になります。

では、いったい搭乗者傷害保険と人身傷害保険は、何が異なるのでしょうか。

この2つの保険の一番の違いは、支払われる保険金の計算方法です。

すなわち、搭乗者傷害保険の場合は、実際に発生した損害額にかかわらず、発生した損害に応じて「あらかじめ定められた金額」の保険金が支払われます。

たとえば、死亡した場合には保険金額が全額支払われることが多いですが、後遺障害が残った場合にはその等級に応じて定められた保険金額が支払われたり、医療保険金については「定額×入通院日数」や「傷害が発生した部位や症状別」に、定額が支払われます。具体的には、5日以上入院または通院した場合に、それが手足の打撲であれば5万円、腕の骨折であれば35万円、足の切断であれば70万円、などの計算方法になります。

これに対して、人身傷害保険の場合は、「実際に発生した損害額」が支払われます。

具体的には、実際にかかった入通院費や精神的損害、逸失利益などが補償されます。

このように、搭乗者傷害保険と人身傷害保険では、保険金の計算方法に根本的な違いがあります。

また、搭乗者傷害保険に加入していれば、人身傷害保険を受け取ってもなお搭乗者傷害保険も受け取れるので、補償が手厚くなります。

ただし、保険会社によっては重複加入が認められないこともありますので、注意しましょう。

4 まとめ

以上、搭乗者傷害保険について解説しました。補償を手厚くするためには、できれば加入しておいた方がいい保険であるといえるでしょう。参考にしてみてください。

 

この記事は弁護士が監修しております。

東京中央総合法律事務所 弁護士 河本憲寿(東京弁護士会所属)
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